仕事とパソコン(2003/4月号)

繁盛サイトの秘密を探れ!


「ネット通販にはダンボールが必要」。このシンプルな発想が成功を生んだ。ネット通販に必要なものをネット通販で販売する。ネットショップの商品配送用のダンボールをオーダーで受注するというオーダーボックス・ドットコムの四方祥樹氏に話を聞いた。

自分のアイデアで仕事をしたい

 卒業後約8年間、大手企業のサラリーマンとして勤めました。最初はなんの疑いもなく企業に就職した私でしたが、次第に組織の中で小さな歯車の一つとして働き続けることに疑問を感じるようになりました。「同じ働くなら会社は大きくなくてもいいから、自分のアイデア一つで食っていけるほうが面白い」と考え、起業を決意したのです。
 サラリーマンを辞めて会社を起こしたのが2000年9月こと。当時はネットバブルの最盛期でした。ものすごい勢いで伸びていたので、「起業するならこの業界しかない!」と、まず最初はインターネット広告の仕事を始めました。時代の気流にのって、瞬く間に売上を伸ばしていき、滑り出しは順調でした。しかし、そもそもバブルですから好景気がそう長く続くはずもありません。景気の下降につれて、売上が不安定になっていったのです。
 そこで私は考えました。広告という商品は先が読めません。今月の売上が良かったからといって、来月もいいとは限らない。世の中の景気に大きく左右されてしまうものなのです。一方、同じネットの世界でも通販であれば、顧客を囲い込むことで、ある程度来月の売上が予測できます。売上が安定すれば、事務所を借りることができ、人も増やせるでしょう。
 それまで会社を作ったとはいっても、自宅を事務所にひとりで動き回っていた私は、事業の見直しを決心したのです。これが私の転機となりました。

“不便”を“便利”にすれば、ビジネスになるに違いない!

 事業を始める場合には、二つのパターンがあると思います。一つはサラリーマン時代に勤めていた業界であるなど、自分が詳しい分野を選ぶ場合。すでに業界に関する知識があり、市場調査などを行った結果、これはいけるという結論に達して起業するケースです。
 もう一つは、自分が実際に不便だなと感じたときに、「これを便利にしたらビジネスになるんじゃないか」と考えて起業するケース。私の場合は後者でした。
 会社を辞めてインターネットの世界で仕事を始めてから、ネット通販の立ち上げに幾度となく立ち会う機会がありました。そんなとき、みなさん困っているのが“物流”と“梱包”だったのです。そこで私が目を付けたのは梱包のほうでした。  たとえば、みなさんがネット通販を始めることになったとします。商品をお客様に発送しようとした時に、それを入れる箱はどこで見つけてきますか?ホームセンターや大手文房具店なら無地のダンボールを扱っているところはありますが、結構値が張るものです。専門業者に注文するとなると通常最低でも1ロット2000枚です。“もし、1ロット100枚から購入できる店があれば…。さらに社名も印刷してくれて、なおかつ手元まで配達してくれるとしたら…”ネット通販のオーナーにとって、これは非常に便利なはずです。そんな考えから、ダンボールという商材がひらめいたのです。
 自らの経験からのひらめきですが、ではネットショップでダンボールを販売して本当に成功できるでしょうか?もう一度見極めを試みました。
 まず、勝ち組がすでにいる商品に後から参入しても勝ち目はおよそありません。まだ誰も第一人者になっていない分野を探し、隙間を突いていかないとだめでしょう。その点、ダンボールといのは、当時はまだ誰も始めていない商材でした。
 それからもう一つ、リピートのオーダーを見込めるという意味でも、ダンボールは理想的でした。ダンボールなら個人の嗜好品ではなくショップ経営に必要な消耗品ですから、なくなったらまた注文してもらえます。
 そんなわけでダンボールを販売するネットショップを立ち上げることに心を決めたのです。

顧客を逃がさないためにメルマガを利用

 会社を設立して約2年が経ちましたが、現在のところ売上は順調に伸びてきています。しかし、とくに大々的に宣伝をしたというわけではありません。ネットショップとしてごく当たり前に、検索エンジンに登録した程度です。ダンボールが必要になった方は、まず“ダンボール”をキーワードにショップを検索するはずです。今でこそ競合他社が増えてきましたが、当時は他にはなかったので、自然とお客様は当サイトにアクセスしてくれました。そこで私が力を入れたのは、訪れてくれたお客様を逃さないための努力でした。
 ダンボールを購入したいお客様の多くは、ネットショップのオーナーや、これからネットショップを立ち上げようしといる方などです。当店ではメールマガジンやサイト上で、そうしたイーコマースに関わっている方々に役に立つような情報を発信するようにしています。
 たとえば、「レンタルサーバーはココが安いですよ」「カード会社だったらココが使いやすいですよ」「こんな新しい決済方法が始まりました」など、ダンボールとは直接関係ないけれども、お客様が知りたがっている情報を提供し、いつもサイトを訪れていただけるようなしくみ作りをしているのです。
 同じような理由で、今、急成長しているネットショップのオーナーさんに取材をしたインタビュー記事もサイト上に掲載し、メールマガジンで記事更新の案内を出しています。成功者の体験談は、これからネット通販を始めようという方ならきっと知りたいはずです。
 そうしたこともあって、現在メールマガジンの購読者数は5000人超。隔週の発行ですが、解約するお客様はほとんどいません。
 ただし、必ずしもこのようなやり方が良いといっているわけではありません。メールマガジンでは商品情報やお買い得情報を流しているというネットショップのオーナーの方も多いと思います。嗜好品や価格競争の激しい商品であれば、それも有効でしょう。
 しかし、ダンボールという商品は“安い”と煽ったからといって売れるものではありません。それに“新商品”もそうそう登場するわけではありません。では当店の場合のメールマガジンの役割とは何でしょう?それは「当店を忘れないでね」「ファンになってね」というメッセージを送り続けることなのです。だからこそお客様にとって有益な情報をお送りすることにたどりついたのでした。

お客様の声を十分に反映する

 当サイトのいちばんの売れ筋は、やはり会社名を入れたオリジナル・ダンボールです。注文の仕方は簡単で、サイト上に現れる指示に従って、ダンボールの三辺の長さを入れ、注文枚数(100枚以上50枚単位)を選び、社名やロゴについての情報を入れて“見積り”ボタンをクリックするだけで即座に料金が表示されます。さらに“注文”ボタンをクリックして個人情報や支払方法を選ぶと、簡単にオーダーできます。
 簡単に店名やロゴマークが入れられるというのは、これからネットショップを始めようというオーナーさんにとっては非常に大切なことです。お客様に届いたとき、無地の箱よりも社名入りの箱の方がアピール度が高いですし、信頼度がグンと上がるからです。
 さらに、お客様からの声を拾い集めて、徐々に新規商品も増やしてきました。では、どのようにすればお客様の声を集められるのか。当店の場合は、メールでのやり取りを大切にすることが、お客様との有益なコミュニケーションに繋がっていきました。
 ネットショップの場合、いちばん手間がかかるのがお客様とのメールでのやり取りです。薄利多売で儲けようという場合は、なるべく手間を掛けないように受注ソフトなどを使って自動返信するなどの工夫がなされていると思います。
 しかし、当店の場合はすこし事情が異なります。というのも、多くのお客様がロゴと社名入りのオリジナル・ダンボールを注文されますので、「どんなデザインにしますか?」「このデザインでいいですか?」とかなり頻繁にメールでやり取りする必要が生じるからです。これを自動返信などで簡略化することはできません。当店のいちばん売りの部分でもあるわけですから、ハートを持って丁寧に対応することを心掛けています。
 お客様から注文が入ると、受注ソフトの画面上に過去の注文履歴、個人情報などがすべて表示されます。それを把握した上で、自動的に出てくる定型文の返信メッセージに、お客様それぞれに合ったメッセージを書き加えて送るようにしています。こうした“ひと手間”はお客様にも伝わるもので、メールであってもきちんとスタッフと対話できるとなると、「こんな商品はありませんか?」とか「こういものを作って下さい」といった“お客様の声”が届くようになってくるものです。その声をもとに新しい商品を開発し、提供する。それがさらに顧客満足に繋がり、お付き合いが続いていくというわけです。
 その結果、お客様からの要望がとくに多かったのが「エアクッションを扱ってほしい」という内容でした。ダンボールに商品を入れる時、次に必要になるのは緩衝材です。でも、エアクッションや発砲シートなんてどこに行けば買えるのか、そこで迷われるお客様が多かったようです。
 それに、緩衝材は軽いけれどもかさ張るものですから、ダンボールと一緒に配達してもらえれば、それは便利なはずです。そこで当店で扱うようになったのですが、順調に注文は伸びています。
 同じように「メール便タイプ」や「パソコン用ダンボール」といった規格サイズの商品も、お客様の声を反映して追加していきました。

次なる課題は新規顧客の開拓

 実際に始めてみてわかったこともたくさんあります。まず一つは、大きい箱を求めている方が結構多いということ。今までに一番大きかったものは、サーフボード用の箱と、自転車用の箱。いずれもオーダーは個人商店の店主の方でした。当店の場合、宅配便で送ることができさえすれば、どんなに大きなダンボールにも対応するようにしています。
 逆に小さなサイズのダンボールも人気の一つです。宅配便の場合、料金は荷物の大きさと重さで決まります。大きさについては、最低料金で送ることができるのは箱の縦・横・高さの合計が60センチ以下の箱になります。そこで、ネット通販のオーナーさんは少しでも送料を安く上げるために、商品が入る大きさで、なおかつ3辺の和を60センチ以内に収めたいはずです。その点、当店のダンボールなら縦・横・高さを細かく設定できますから思い通りの小さなダンボールが手に入るというわけなのです。
 「ダンボールという商材はいけるんじゃないか」という最初のひらめきを信じて、そのまま突っ走ってきたのは正解だったなと、今振り返ってみてそう思います。ただ、当初は当店1件だけだったのですが、今では後発のショップが多数出てきました。これまで順調に売上を伸ばしてくることができ、目標の半分ほどは達成できましたが、今後の課題は、新規顧客の開拓に力を入れること。まだまだネット通販が増加の一途を辿っている今こそ、いかに当店を知ってもらい、お客様になっていただけるかが勝負だと思っています。